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東京地方裁判所 昭和31年(行)79号 判決

原告 有限会社東京タイムズ印刷社

被告 東京都港税務事務所長

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、原告の申立

一、被告が原告に対し昭和三十年九月十二日なした原告の昭和二十九年四月一日から昭和三十年三月三十一日にいたる事業年度の法人事業税を三十万八千二十円、不申告加算金を六万一千六百円と決定した処分はこれを取消す。

二、訴訟費用は被告の負担とする。

との判決を求める。

第二、被告の申立

主文第一項同旨の判決を求める。

第三、原告の主張

一、被告は、昭和三十年九月十二日附で、原告に対し、原告の昭和二十九年四月一日から昭和三十年三月三十一日までの事業年度分の法人事業税を三十万八千二十円、不申告加算金を六万一千六百円と決定し、その頃原告に通知した。

二、原告は、右処分を不服として、昭和三十年十月十一日附をもつて、東京都知事に対し、異議を申立てたところ、都知事は昭和三十一年七月二十日、右申立を棄却し、同月二十五日原告に通知した。

三、しかしながら被告の前記処分は、原告の事業が地方税法第七十二条の四第二項第一号所定の新聞業として法人事業税の課税対象とならないものであるにもかゝわらず、原告に対し、法人事業税を課したものであるから違法である。

よつて被告の右処分の取消を求める。

第四、被告の答弁及び主張

一、原告の主張第一、第二項の各事業は認めるが、第三項は争う。

二、地方税法第七十二条の四第二項第一号により非課税とされる新聞業とは、時事の報道を目的とする新聞(毎月三回以上号を追つて定期に発行されるものに限る)を発行する事業であるが、こゝで新聞の発行とは、時事に関する記事を取材し編集して印刷した新聞を世上に頒布することである。しかるに原告の事業は新聞の製版印刷を専業とするものであつて、新聞の発行という要素を欠いているから、地方税法により非課税とされる新聞業とはいえない。したがつて、原告に対し法人事業税を課したことは違法ではない。

第五、被告の主張に対する原告の答弁

原告の事業が新聞の製版印刷を専業とするものであることは認めるが、その余は争う。新聞の印刷事業も新聞製作事業の一環をなすものであつて特に原告のように新聞のみの印刷を業とするものは地方税法にいう新聞業に含まれると解すべきである。

第六、証拠〈省略〉

理由

一、原告の主張第一、第二項の各事実は当事者間に争がない。

二、そこで被告の処分が違法かどうかにつき判断する。

原告は、原告の事業が地方税法第七十二条の四第二項第一号の新聞業に含まれ非課税とさるべきにもかゝわらず、これを看過して原告に対し課税したものであるから、被告の処分は違法であると主張する。

しかしながら、地方税法第七十二条の四第二項第一号の新聞業とは、時事の報導を目的とする新聞(毎月三回以上号を追つて定期に発行されるものに限る)を発行する事業を指し、右規定にいう新聞の発行とは、時事に関する記事を取材し編集して印刷した新聞を世上に頒布することと解するのが相当である。しかるに、原告の事業が新聞の製版印刷を専業とするものであることは当事者間に争がなく、本件にあらわれた全証拠によつても、原告の事業が新聞の発行をしていることを認めることはできない。してみると原告の事業は、地方税法第七十二条の四第二項第一号の新聞業にあたらないというべきであり、原告主張のように新聞印刷業が右新聞業に含まれると解することは相当でない。そうすると、被告の処分には原告主張のような違法はないといわなければならない。

三、よつて原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 石田哲一 地京武人 越山安久)

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